急急如律令とは
祇園祭でよく目にする”急急如律令”とは陰陽師などが用いる霊符(お札)に記載されている文言であり、「勅令を遅滞なく実行せよ」という意味です。
霊符の起源は中国の符簶(ふろく)と呼ばれる割符にあり、神と個人の間の契約を担保するものとして用いられました。ここでは、古代中国の制度が擬制されており、皇帝の勅令のように、将軍神などの命令を天神地祇などに実行せしめるべくこの文言が記載されます。ここから、「霊符に記載された内容が速やかに現実化されるように」、という意味に発展します。
祇園祭でこの文言を目にするのは安倍晴明が編纂したとされる『三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集』という占術の専門書にある、牛頭天王のエピソードによります。
牛頭天王は后がいなかったため、沙羯羅竜王の娘、頗梨采女を娶りるため、竜宮に向かいます。道中、泊まるところがなかったので、裕福な巨旦将来という人に一夜の宿を求めますが、断られます。その後、巨旦将来の奴隷だった女性に会います。彼女は巨旦将来の兄の蘇民将来というの所に行けば助けてくれる旨告げます。
蘇民将来は貧しいながらも牛頭天王をもてなします。
その後、牛頭天王は頗梨采女を娶り、帰り道に巨旦将来を一族もろとも滅ぼしますが、この時、城内にかつて自分を助けてくれた巨旦将来の奴隷のことを思い出します。この時、牛頭天王は邪気を払う桃ノ木の木簡に”急急如律令”と書き、彼女のたもとに入れ、助けました。
祇園祭の本義は疫病退散にあります。当初はその原因たる疫神を追いやることが目的でしたが、時代とともに疫神とされた牛頭天王に守ってもらうことがその趣旨となりました。先ほどのエピソードは『備後国風土記』と相まって茅の輪くぐりをすることや茅の輪のお守りを所持することにより、疫病から逃れることができるとの信仰に発展します。茅の輪くぐりやこれらの事実から、”急急如律令”という文言を祇園祭で目にする理由になります。ここでは、「速やかに疫病から逃れる」ことができるという意味になります。
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