概説
祇園祭の山鉾巡行には前祭、後祭併せて、合計36基の「山鉾」が登場します。この「山鉾」は、鉾、山、屋台により構成されますが、区別がしにくいのが一枚目の鉾と二枚目の山(曳山)です。これを見分けるのは簡単で、屋根の上にある木で区別します。山の屋根の上にある棒状のものは真木(しんぎ)、山の屋根の上にあるものを真松(しんまつ)といいます。これが今日、混同しがちな鉾と山(曳山)の区別の仕方です。因みに、曳山は前祭の岩戸山、後祭の南観音山、北観音山、鷹山の四基だけです。
この様に、簡単に区別できますが、実際にはこれだけに止まるものではありませんので、以下、「山鉾」の区別につき解説申し上げます。
2022年には鷹山が169年ぶりに巡行に復帰したよ。
簡単に説明すんべ。
- まず車輪の有無を確認してくれ。車輪があった場合、屋根に棒がささってれば鉾、松がささってれば曳山、船の形をしてれば屋台だ。
- 次に車輪がない場合、上に松と山洞っつー赤いかまくらみてえのがあったら、舁山で、なかったら屋台だ。
形式的にはこれで区別できんべ。
山鉾の種類
鉾と山の態様
- 鉾という名称を付されたもの・・・鉾、傘鉾、船鉾(屋台)
- 山という名称を付されたもの・・・舁山(かきやま)、曳山、屋台
まずは、山鉾の種類を確認します。鉾と山はそれぞれ三つの形式に分かれます。今、問題にしているのは赤字で書かれている、鉾と舁山・曳山の違いです。山は舁山と曳山の二種類がありますが、舁山が基本形で、これを発展させた、若しくは鉾に近づけたものが曳山です。
鉾と山の区別の仕方
原則
- 真木/真松の有無
- 車輪の有無
- 囃子方の有無
鉾と山は原則的に以上の基準により区別します。以下、個別に検討します。
1.真木/真松の有無
冒頭の写真を見てみましょう。屋根の上にある(実際には下まで貫通しています)棒状のものを真木(しんぎ)といいます。
真木も後述かます真松も櫓っつー人が乗ってる下の箱みてえな骨組みの一番したまで貫通してんのよ。詳細は以下のリンクを参照してくれ。
真木の先端には、鉾頭(ほこがしら)と呼ばれるものがついています。写真は長刀鉾の長刀です。真木の下の方についている緑色のものは榊で白幣がついています。
他方、舁山には真松と呼ばれる松の木があります。
また、舁山を発展させた曳山にも同様に真松があります。
先程申し上げましたように、鉾と曳山を区別するだけでしたら、この真木の有無だけで足ります。
2.車輪の有無
鉾には車輪があり、人が曳きます。
他方、車輪はなく、舁山は文字通り、肩にのせて人が担ぎます。(ただし、実際には小さな車輪がついていて、押しています。かつては神輿のように担いでいました。)
ただし、曳山には車輪がついています。
3.囃子方の有無
鉾には囃子方が乗り、お囃子を演奏しますが、舁山にはありません。ただし、曳山には囃子方が乗っています。囃子方をのせる場合、山もある程度の大きさになり重量が増しますので、車輪を付けて曳くような形態になったのかもしれませんし、逆に、車輪を付けて曳くくらい大きくなったから囃子方をのせられるようになったのか、いずれかはよくわかりません。
舁山と屋台の区別
真松と山洞
舁山と屋台(船型を除く)には車輪がありません。
舁山には真松の他、矢印で示した山洞がありますが、屋台にはありません。
ご覧のように、真松、山洞がありません。屋台は船鉾、蟷螂山、大船鉾、橋弁慶山、浄妙山の5基のみです。
この内、船鉾と大船鉾には真木も真松もありません。にも拘わらず、「鉾」という名称が付されています。
ここに、「月次祭礼図屏風」という15世紀に描かれた、応仁の乱以前の巡行の様子を伝える屏風があります。現存するのは江戸時代にこれを模写したものですが、ここでは、船鉾に真木のようなものがかかれています。他方、高名な「洛中洛外図屏風」(杉本本)などには、真木を想起させるようなものは描かれていません。
恐らく、鉾という名称が付されている以上、かつては真木、若しくはこれに準ずるものを具備していたのではないかと考えられます。気になられた方は文化遺産オンラインというサイトのこのページを参照してみてください。
リンク切れのため、東京国立博物館のこのページをご覧下さい。
はっきりしたことはわからんニャー