Introduction
伏見稲荷大社にはたくさんのキツネさんがいます。キツネさんは御祭神たる宇迦之御魂大神の眷属(使者)です。本稿では御祭神や神仏習合の観点から、両者の関係を詳らかにします。合掌
海外ではよー、伏見稲荷は”Fox shrine”と呼ばれたりすんのよ。 ヘビ文字版もあるからよかったら読んでみてくれ。
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キツネさん
遠い昔、キツネさんは人々に豊穣をもたらす山や田の神とされていました。
キツネさんは神秘的な動物と考えられており、しばしば超自然的な現象と結び付けられました。例として、狐の嫁入りを挙げます。
かつては日本の至所で、怪火と呼ばれる炎が宙に浮いている現象が目撃されました。当時は夕刻から夜にかけて行われ、提灯をもって列をなして嫁入りがなされましたところ、この正体不明の怪火が狐が嫁入りをしていると考えられました。
また、キツネさんはその神秘的な能力の一つとして、未来を予見することができると信じられていました。
眷属とは?
冒頭で申し上げましたように、伏見稲荷のキツネさんは御祭神の眷属です。眷属とは、神々に従する動物や想像上の生物を指し、その多くは神々の使者とされています。
伏見稲荷では五柱の神様から成る稲荷大神を祀りますが、その中で最も重要な神様が宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)です。
それでは、なぜ、キツネさんが眷属になったのでしょうか。これには謂れがあります。むかし、船岡山にキツネさんの一家が住んでいました。人間の役に立ちたいと常々考えていました。何をなすべきか、伏見稲荷に赴き、御祭神に伺いを立てたところ、眷属になるよう諭したとされます。こうしたおとぎ話のような逸話が残っていますが、実際にはもう少し複雑な理由があります。
伏見稲荷創建前
何世紀も前、人々は蛇を水の神様として信仰していました。この信仰は中国から陰陽道が入ってくると龍に対する信仰と混交し、龍蛇神に対する信仰に変化していきました。
伏見稲荷は稲荷山のふもとにありますが、この稲荷山は龍蛇信仰が盛んなところでした。
そんな中、711年に伏見稲荷が創建されます。その契機は『山背国風土記』によりますと、秦伊侶具(はたのいろぐ)という人は稲の耕作により栄えていました。驕った秦伊侶具餅を的にして矢で射ったところ、餅は白鳥になり、稲荷山の頂上に止まり、そこから稲が生えたので、お社の名にしたとあります。
その時祀られた神様については言及されていませんが、宇迦之御魂大神が祀られた端緒をしめしているものと解されます。
宇迦之御魂大神の”宇迦”は穀物など食料を意味するからね。
神仏習合
仏教が6世紀に公式に伝来すると、以降、我が国の神祇体系と仏教が混交し始めます。これを神仏習合といいます。この状況の下、宇迦之御魂大神は荼枳尼天(だきにてん)と習合します。荼枳尼天は古代のインドの地母神(大地の神様)で豊穣と母性を象徴します。これに加え、未来を予見する能力を有するとされました。
この豊穣と未来を予見するという共通点から、キツネさんは荼枳尼天の眷属とされるようになります。そして、宇迦之御魂大神は荼枳尼天と習合していることから、キツネさんも宇迦之御魂大神の眷属と看做されるようになります。
キツネさんが咥えているもの
稲穂
宇迦之御魂大神、すなわち稲作の神様の眷属ですので、稲穂を咥えています。
宝珠
宝珠は宇迦之御魂大神がもたらす豊穣を意味します。
鍵
この鍵を持つことで、宇迦之御魂大神に助けていただけます。また、米の蔵のカギを意味するともいわれます。
巻物
巻物には叡智が記載されています。
伏見稲荷大社について
伏見稲荷大社へのアクセス
JR 奈良線
稲荷駅の目の前。普通のみ停車
京阪
伏見稲荷駅から徒歩約5分。朝の急行、準急、普通のみ停車