概説:長さと由来
重要事項
- 三十三間堂の本堂は南北に桁行が三十五間(118.2m)、東西に梁間が5間(16.4m)ある。
- この「間」とは、尺貫法の一間(約1.82m)のことではなく、柱と柱の間の空間を指す。
- 名前は御本尊たる国宝千手観音座像、並びに重要文化財千体千手観音像が祀られる母屋(母屋)が三十三間であることに由来する。これは観世音菩薩の三十三応化身に基づく。
本稿では、上記につき、詳細に解説申し上げます。合掌。
通し矢は以下を参照してくれ
確認事項
まず、三十三間堂を正面から見た状態を確認しましょう。柱が36本あり、柱と柱の間の壁は35枚あります。
次に、三十三間とは尺貫法の一間x33ではないことを確認しましょう。
三十三間堂は縦が118.2m、横が16.4mの長さです。尺貫法の一間で計算しますと、一間は約1.82mですので、縦の長さは1.82×33=約60.06m、三十三間という数とは辻褄が合いません。
理由は「間」とは尺貫法の間ではなく、柱と柱の間の数の事を「間」と呼ぶところ、三十三間堂では、長い方を正面から見ると、母屋(もや)の柱の間が三十三(柱が34本)あるからです。
しかし、ここで疑義が生じます。冒頭で申し上げました通り、三十三間堂は「三十五間」、すなわち正面から見ると、柱が36本、柱と柱の間の壁が35枚あります。これは三十三間堂という名称は「母屋(もや)」が三十三間あることに由来するからです。母屋の周囲に「庇」という部分があるので、これを足すと三十五間になるわけです。
上の図の2枚目は三十三間堂を正面からみたとこだ。長方形は柱だ。とりあえず母屋の四方を庇っつー廊下みてえなのが囲んでると考えてくれ。まず、母屋が33間あんべ、で、その左右の横に一間ずつ庇(廊下)がついてんのよ。これで35間になんべ?
尚、118.2÷35=約3.38=一間(柱と柱の間の距離)というわけではありません。これはすべての柱と柱の間の距離が同一ではないことに起因します。
間面記法
概説
先程から申し上げている「間」とは間面記法の「間」を意味します。間面記法とは古代に建造物の規模を示すために用いられたものです。この記法に則りますと、三十三間堂は「三十三間四面」のお堂となります。
「三十三間」は桁行(けたゆき)の幅(長さ)を表しています。「四面」とは母屋の四面に庇(庇)がついていることを表しています。これだけでは何のことかわかりませんので、以下、詳らかにしていきます。
母屋
上の図をご覧下さい。この図は母屋/身舎(もや)という寺院建築機能面での最小単位を表しています。点は柱を、線は壁を示しています。建物は桁行と梁行(はりゆき)で示されます。赤い線が桁行で、青い線が梁行です。この図ですと、桁行が三間、梁行が二間です。
桁や梁とは何を意味するのでしょうか。上の写真をご覧ください。これは八坂神社の手水舎です。桁行が一間、梁行も一間です。
中に入ってみましょう。左右に柱があり、赤い線が桁、青い線が梁です。梁の長さ、桁の長さ、ともに一間で、母屋のみで構成されています。これら桁と梁の伸びている方向をそれぞれ桁行、梁行といいます。
三十三間堂では、赤い線で示した桁の端から端までの間に34本の柱があって、柱と柱の間がの空間が33個あるんだよ。
お寺なんかの建築はさっきいった「桁行」の方向だったらいくらでも伸ばせんだけど、「梁行」の方向には限度があんのよ。「桁行」の方向に継ぎ足していけばいいだけだからな。ところが、「梁行」の方向に継ぎ足したら、屋根の頂上が二つになんべ?だから、「梁行」の方向拡張したかったら、梁そのものを延ばす必要があんのよ。上の写真を参照してくれ。青い線が梁だ。梁は黄色い線でしめしたに「棟木」を支えてんだ。他方、赤い線で示した梁は緑の線の垂木がのってるだけだ。どっちが強度が要求されるかは自明だべ?だから強度の関係で、梁の方向に建物を延ばすのはおのずと無理があんのよ。
一枚目は法隆寺の回廊、二枚目は東大寺の回廊で、梁行はいずれも一間だよ。法隆寺のものと比べると、東大寺の回廊の梁はなんか頑張ってる感じがするよね。人と比べると梁はかなり長いね。
回廊とか三十三間堂はよー、この八坂さんの手水舎を左右に何個もくっつけたのと同じ構造になってんのよ。
だからこんな風に桁行がながくなるのは平気なんだよ。回廊なんかも桁行がびよ~んと伸びて細長い廊下になっているんだよ。
庇
次に建物を大きくする方法を考えてみましょう。桁行の方に建物を広げるのであれば、柱を増やしていけば問題ありません。三十三間堂や回廊は桁方向に柱を増やしたものです。ところが、先ほど申し上げましたように、梁方向に伸張するには限度があります。
そこで、柱を立てて母屋とは別に床を足します。これを庇(ひさし)といいます。三間の母屋の一つの面、例えば前面だけに庇を付ければ「三間一面」となります。上の図ですと、左右に一間の庇がついていますので、「三間二面」となります。三十三間堂では母屋の四方に庇がありますので、「三十三間四面」となります。
母屋と庇の機能
この母屋というのが寺院の建築では最も重要な部分になります。故に三十三間堂では御本尊たる千手観音座像、並びに千体千手観音像はすべて母屋の中に祀られています。そして、庇は我々が歩く廊下として機能しています。
これらの区別は厳密になされるものです。例えば、東大寺大仏殿では母屋に御本尊たる部盧遮那仏、庇には脇侍たる虚空蔵菩薩像、並びに如意輪観音像、そして、庇の周囲に付属する「裳階(もこし)」という部分に四天王像が祀られています。
三十三間堂では母屋に観音様が祀られてて、庇はオレたちがあるくようになってるから今一つ分かりにくいかもしれねーけど、母屋>庇>裳階っつー重要度の序列は絶対なのよ。詳細は以下の大仏殿の構造を参照してみてくれ。
京都の私は野ざらしですけどね
アフロアヒルは屋根付きだぜ。
三十三の意味
先程申し上げましたように、三十三間堂に祀られているのは千手観音像です。所謂、「観音さま」のことです。この観音さま(観世音菩薩)は衆生をすくうため、三十三応化身という33の態様を以て我々の前にそのお姿を現されると説かれます。三十三間の母屋は右に由来しています。
千手観音様につきましては、以下の清水寺の御本尊の記事をご参照ください。三十三間堂の千手観音菩薩像につきましては、追ってご紹介申し上げます。
三十三間堂へのアクセス
三十三間堂最寄りのバス停は三十三間堂前バス停です。86, 88, 100, 110, 206, 208の各系統が止まりますが、現在、新型コロナウイルスの影響で、観光系統が運休中のため、三十三間堂に向かうバスは混雑しています。故に、本サイトでは京阪七条駅から行かれることをお勧めします。
ま、空いてればバスでいってもいいけどね。
三十三間堂基本情報