干支の意味と由来
干支は文理上、「干」と「支」から成り、「干」は「十干(じっかん)」、「支」は「十二支(じゅうにし)」を意味し、暦をあらわす場合に用いられます。飛鳥時代以前に中国から日本に伝わり、604年に我が国最初の暦が作成されました。乙巳の変の「乙巳」や庚午年籍の「庚午」はそれらが起こったり制定された年(十干十二支)を指しています。現代では一般的に年を表す場合に十二支が用いられます。
十干とは、甲乙丙丁戊己庚申壬揆から成り、元来植物の生育の状態を表します。紀元前から中国で日を表す単位として用いられました。これが中国の戦国時代に生まれた陰陽(いんよう)説と五行説と結びつき、それぞれが五行の陰と陽に該当すると考えられるようになりました。
まず、陰陽説の陰陽とは日陰と日向のことで、万物を相対する陰と陽から成ると構成する二元論です。次に、五行説とは、万物が木火土金水の五つの要素からなると構成する五元論です。陰陽五行説では陰と陽の均衡、並びに五行の相生・相克により万物を説明します。
他方、十二支とは子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥から成り、十干と同様、元来植物の生育の状態を表します。年月を表すものとして用いられ、後に動物が当てられるようになりました。
この陰陽五行説は所謂「陰陽道」の基礎をなすんだけど、右に関する偏頗のある表現物や特定の時代に特化した表現物から惹起される予断は本稿の理解を妨げるおそれがあるので、忘れてくれ。わりーけど。
十干
十干と五行説
十干 | 甲(こう) | 乙(おつ) | 丙(へい) | 丁(てい) | 戊(ぼ) | 巳(き) | 庚(こう) | 辛(しん) | 壬(じん) | 癸(き) |
意味 | 木の兄 | 木の弟 | 火の兄 | 火の弟 | 土の兄 | 土の弟 | 金の兄 | 金の弟 | 水の兄 | 水の弟 |
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 | |||||
五方 | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 | |||||
四時 | 春 | 夏 | (土用) | 秋 | 冬 | |||||
五色 | 青 | 朱 | 黄 | 白 | 玄(黒) | |||||
四神 | 青龍 | 朱雀 | (勾陳) | 白虎 | 玄武 |
上の一覧表を参照してね。五行は季節や方角なんかにも適用されて、よく聞く四神相応なんかも五行説からきてるよ。
十干と陰陽説
十干は陰陽説に則り、「陽干」と「陰干」に分けられます。上の表ですと、意味の項目の「兄」が陽干、「弟」が陰干になります。
- 陽干・・・甲、丙、戊、庚、壬
- 陰干・・・乙、丁、己、辛、癸
十二支
十二支と五行説
十二支 | 子 | 丑 | 寅 | 卯 | 辰 | 巳 | 午 | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 |
五行 | 水 | 土 | 木 | 木 | 土 | 火 | 火 | 土 | 金 | 金 | 土 | 水 |
十二支と陰陽説
十二支も十干と同様、陰陽説に則り「陽支」と「陰支」に分かれます。
- 陽支・・・子、虎、辰、午、申、戌
- 陰支・・・牛、卯、巳、未、酉、亥
十干十二支
組み合わせ
これまで見てきた十干と十二支を合わせて年に振り分けます。ただし、十干と十二支の組み合わせは120通りありますが、先述の陽干は陽支と、陰干は陰支としか結びつきません。そこで、12と10の最小公倍数たる60の組み合わせがあることになります。
数え年で61歳のときにこの組み合わせが一巡すると還暦(元の暦に戻る)よ。
本来は十二支は十干十二支で表されるので、暦では「乙巳」などと表記されます。
算出方法
十干は西暦を10で割り、あまりから以下に則り振り分けます。
あまり | なし | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
十干 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 巳 |
十二支の場合は12で割ります。
あまり | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
十二支 | 申 | 酉 | 戊 | 亥 | 子 | 丑 | 寅 | 卯 | 辰 | 巳 | 午 | 未 |
2025年の場合、2025÷10=202、あまり5だから十干は「乙」、2025÷12は168、あまり9だから十二支は「巳」、つまり乙巳となるね。冒頭の乙巳の変も同じ答えになるから計算してみてね。
干支の一覧とそれぞれの意味
概説
冒頭で申し上げましたように、一般に干支というと十二支を指します。元来は植物の生成状態をあらわすものでしたが、字や音から動物が当てられ、当該動物から俗信がうまれます。以下簡潔にご紹介します。
子=ねずみ
元来は孳(し)といい、植物が胚胎を指し、ねずみと結びつきます。ねずみは繁殖力が強いので、子孫繫栄を意味します。また大黒天の使いともされ、財力を象徴します。大豊神社などに祀られています。
丑=うし
元来は紐(ちゅう)といい、植物の芽が出る前の状態を指し、牛と結びつきます。力強さ、忍耐力、縁結びなどを意味します。
寅=とら
元来は螾(いん)といい、植物の芽がでた状態を指し、トラと結びつきます。勇敢さ、邪気を祓う、決断力などを意味します。
卯=うさぎ
元来は冒(ぼう。卯の音読みも”ぼう”)といい、植物が繁茂した状態をさし、うさぎと結びつきます。家族単位で行動するので、家庭円満、多産なので子孫繁栄、跳躍から向上などを意味します。岡崎神社などに祀られています。
辰=龍
元来は振(しん)といい、植物が整った状態を指し、龍と結びつきます。十二支のなかで唯一の想像上の動物です。権力や水などを象徴します。清水寺などに祀られています。また、八坂神社や貴船神社には龍穴があります。
已=へび
元来は已(い)といい、植物の最盛期を指し、ヘビと結びつきます。再生、出発などを意味します。弁財天の神使とされることから、金運を意味することもあります。
午=うま
元来は忤(ご)といい、植物が最盛期をすぎた状態を指し、馬と結びつきます。健康、豊作などを意味します。
未=ひつじ
元来は昧(まい)といい、植物が鬱蒼としている状態をさし、羊と結びつきます。神とのつながりが強く、家内安全、平和などを意味します。
尚、明治時代までひつじとヤギは峻別されてねーから、絵でみるとヤギが描いてあることが多いぜ。
申=さる
元来は呻(しん)といい、植物の果実が成熟していくさまを指し、猿と結びつきます。山神の使いや馬を守ると信じられており、賢さなどを意味します。
酉=とり
元来は緧(しゅく)といい、植物の果実が熟した状態をさし、鶏と結びつきます。「とりこむ」の意義から、商売繁盛や繁栄などを意味します。
戌=いぬ
元来は滅(めつ)といい、植物が枯れた状態を指し、犬と結びつきます。忠義や安産を意味します。
亥=いのしし
元来は閡(がい)といい、植物の生命が種の中にある状態をさし、イノシシと結びつきます。無病息災、安産などを意味します。護王神社などに祀られています。