概説
祭とは神に対する謝意や畏怖の念を表する、若しくは祈念を目的とし、奉納をなす行為であります。本稿ではその意義につき詳細かつ簡潔に解説申し上げます。合掌
尚、本稿は適宜加筆修正されます。現在はver. 2.2です。
祭の本義と神
本義
祭は様々な理由で斎行されますところ、最も重要なものは祖先崇拝、農耕の豊穣の記念、自然災害や疫病の予防と事後の対処となります。右を成すため、神に対し祭が斎行されます。

この「神」という概念は我が国固有のものであり、godとかdieuとは異なるから注意してね。
これに加え、祭を通じ、神性の獲得を介することにより、我々に日々蓄積された穢れを祓い、心身を活性化する狙いもあります。すなわち、同様に、カミもまた祭に際し活性化されます。例として葵祭の前儀たる御蔭祭、祇園祭の久世駒形稚児などが挙げられます。
神とは
カミ 神
古の日本人は自然や自然現象の背後に人格を擬制しカミを見出しました。これは自然は生命を胚胎するものであり、万物を生み出すものであり、そこに御霊(みたま)が宿るとの考えに基づきます。故に畏怖、畏敬の対象となりました。

これが西洋との決定的な違いよ。西洋だと自然は征服さるるものであると考えられるからな。語源たるラテン語でも「生む」みてーな意味なのによー。
同様に、祖霊もカミと考えました。これは理解しやすいと思います。
自然に対しても人格を擬制しますので、我々と同じような態様で行動するものと考えられました。すなわち、丁重に接すれば良い結果を招来し、ぞんざいに接すればよからぬ結果が惹起されると考えられました。伝統的にはカミに概ねこれら二つの意義があります。
そして、神は岩、山や木などに宿ると考えられ、神が宿る岩を磐座(いわくら)と呼びます。
そして、これらの意義が世代間で間段なく承継され、かつ我々の紐帯として機能してきました。
御霊信仰と疫神
上記に加え、御霊(ごりょう)と疫神もまた重要なカミです。
御霊とは、政争や不慮の出来事で亡くなった人の霊(みたま)のことで、これにより天災や疫病災などが引き起こされると考えられました。この御霊に畏怖を以て祀ることを御霊信仰といいます。最も著名な御霊は北野天満宮に祀られる菅原道真公です。
他方、疫神とは疫病の原因であると考えられたカミのことです。この疫神という概念は天王信仰に至ります。天王信仰とは陰陽道と仏教からなる牛頭天王に対する信仰です。祇園祭はこの牛頭天王のご利益により疫病を退散される目的で斎行され、今日でも生き続けています。


干支の投稿でも触れたけど、「陰陽道」に関する偏頗のある表現物や特定の時代に特化した表現物から惹起される予断は本稿の理解を妨げるおそれがあるので、忘れてくれ。わりーけど。
祭の意義
意義
祭という語はいくつかの語が語源であると解されますが、主要なものは、「まつる」と「まつろう/ まつらう」です。
「まつる」とは目上の人に対し何かをすることであり、「まつろう/ まつらう」とは目上の人に対し仕えるという意味があります。これらにより、祭とはカミに対し、何かをなし、侍ることによりその霊的な力に与ることを意味します。「祭」という場合、なされることは数多ありますが、神饌を供し歌舞を奏上することが中心と解されます。

さっきいったべ?神さんも人間と同じように振舞うってよー。なんか食べて音楽とか踊りとかかまされれば、誰だってうれしいべ。
“祭” という漢字の意味
漢字は概ね一世紀ころに我が国にもたらされたと考えられています。ここでは、なぜ「まつり」という語に対し、「祭」という漢字が当てられたのかを見てみましょう。
祭
当該漢字は三つの部位から成ります:
- 左上は供物としての肉を表します。
- 右上はその肉を持つ手を表します。
- 中心部は台の上にある供物たる肉から血が滴り落ちる様子を表します。
このことからもわかるように、祭とは供することであり、神饌(と広義の奉納)が重要な要素となります。
祭祀の態様
依代
祭祀が行われるには神がいることが必要です。先ほど申し上げましたと通り、神という概念は自然崇拝が根幹をなしますところ、磐座に宿ると考えられました。これを依代といいます。尚、磐座は後に神社の起源となります。
他方、神は遠方からやって来るとの考えから、神籬(ひもろぎ)に降臨するとも考えられました。葵祭に先立ち、上賀茂神社では御阿礼神事という神事が斎行されますが、この神事は神籬に神を降臨せしめる原始的な態様をとどめています。(非公開)
依代として重要なものに、オハケがあります。これも神を降臨せしめる対象です。祇園祭の還幸祭に際し、御供社への神輿の渡御に先立ち、御幣が立てられ、これをオハケと呼びます。
また、オハケは鞍馬の火祭でも目にすることができます。祭の期間中、オハケの立てられた家に由岐神社の御祭神が滞在されます。
潔斎
祭祀に際しては、神との接触、神性の具備を伴いますところ、心身の清浄が必要です。そこで、潔斎が行われます。
長期間の潔斎の後に斎王が賀茂祭(今日の葵祭)に奉仕したことは顕著な例です。

詳細は以下のリンクを参照してくれ。


今日でも祭に際して同様に潔斎がなされます。
神饌(しんせん/ みけ)の奉納
神饌とはカミに供される食事のことです。供する行為は献饌とよばれます。
今日、概ね祭祀は以下の態様により斎行されます。
- 修祓 : 祭に際し祓をなすこと
- 神饌献撤 :神饌を供し、撤すること
- 祝詞奏上
- 礼拝
神饌は米、酒、水、穀物、魚、野菜、調味料などから成ります。

ビデオは粟田祭で神饌を調理する様子だよ。神聖なので手を触れずに菜箸のような箸と庖丁のみでお魚さんが料理されているね。
歌舞の奉納
先ほどの御蔭祭では神輿が賀茂波爾神社に到着すると、還城楽が奉納されます。
また、祇園祭では神輿が御旅所に到着すると、雅楽が奉納されます。(11:22)