概説
疫神社夏越とは、京都の八坂神社の祭礼たる祇園祭の最終日、7月31日に同社の摂社たる疫神社にて斎行される祭祀で、ここに於いて祇園祭の終了が宣言されます。参拝者は鳥居に設けられた茅の輪をくぐり、いただいた茅で茅の輪のお守りを作り、一年間の無病息災を祈願します。本稿では右の意義、並びに茅の輪のお守りの作り方につき紹介申し上げます。合掌。
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疫神社とは?
疫神社とは、八坂神社の西楼門を入ってすぐの所にある八坂神社の摂社です。ここに祀られているのは蘇民将来という神様です。この神様は祇園祭の本義、則ち、疫病退散のご利益と深い関係がありますところ、これは以下の逸話に基づきます。
神仏習合に於いて、八坂神社の御祭神の素戔嗚尊は牛頭天王という神様(厳密には仏)と習合していたんだ。これを前提に読み進んでくれ。以下の話は『簠簋内伝』という書物に書いてある話だ。なぜこの書物に依拠するのかは、下のリンクを参照してくれ。
『簠簋内伝』によれば、牛頭天王が、頗梨采女を娶るため、竜宮に赴く途中、裕福な巨旦将来という人に一夜の宿を求めますが、断られます。そこで、兄の蘇民将来という人に頼んだところ、貧しいながらも、精一杯、牛頭天王をもてなしました。その後、牛頭天王は、頗梨采女を娶った帰り道に巨旦将来を一族もろとも滅ぼします。他方、蘇民将来に対しては、自分が疫神として再び現れた時にはその子孫と共に守る旨伝えます。
茅の輪のお守りの話は『備後国風土記』逸文ていう書物に出てくるんだけど、ここまでの話はほぼ一緒だよ。それと、疫神とは疫病をもたらす神様だよ。詳細は以下のリンクを参照してね。
『備後国風土記』では、この後、牛頭天王(原文では武塔天神とありますが、ここでは牛頭天王のことお考えください。)は自らは素戔嗚尊(原文では速須佐雄能神)であり、”後世爾疫氣在者 汝蘇民將來之子孫止云天 以茅輪着腰在人者 將免止詔伎”と蘇民将来に伝えます。
オレが簡単に訳すぜ。「この後、世の中に疫病が流行った時は、「蘇民将来の子孫です」と言って腰に茅の輪をつけてる人は疫病から逃れることができるだろう。」っていう意味だ。
この蘇民将来が神様として祀られているのが疫神社です。そして、上記の逸話に則り斎行されるのが祇園祭であり、上記の茅の輪を擬制すべく、疫神社夏越祭で写真のお守りを作ります。
祇園祭と上記逸話の関係を詳らかにすると、とても長くなりますので、詳細は先程ご紹介しました、2つのリンクをご参照ください。
茅の輪のお守りの作り方
概説
- 疫神社夏越祭終了後、疫神社に参拝する。
- 茅を頂く。
- 茅で円を作り、柔らかくして、くせをつける。
- 茅を編み込みながら茅の輪をつくる。
- 「蘇民将来子孫也」の短冊をつける。
2022年は多数の参拝者に鑑み、茅の頒布はありませんでした。代わりに茅の輪守(500円)、粟餅(300円)、ひねり守(200円)の授与がありました。
1.疫神社夏越祭終了後、疫神社に参拝する
疫神社夏越祭は7月31日、10:00より始まります。神事は概ね30分~くらいです。例年ですと、列を作って参拝を待ちます。
熱中症対策を忘れるなよ。あと、鳥居には茅の輪が設けられてるけど、夏越しの祓の時みてえにくるくる回るんじゃなくて、一礼してくぐるだけだ。
2.茅を頂く
参拝した後、鳥居の向こう側にお守り用の茅を具備した垣があるのでそこからいただきます。2022年は新型コロナウイルス感染症の影響により、社務所での頒布(初穂料たしか500円)
この時、茅は必ず一本にしてください。何本もいただいて、大きなものを作ろうとされる方が散見されますが、小さいものの方が綺麗に作れますし、携帯にも便利です。
概ね直径10センチ以下を目指してください。文庫本の大きさを参考になさってください。
でけえ花火を打ち上げようとするなよ。
茅で円を作り、柔らかくして、くせをつける。
ここで写真のように円を作ります。この円はくせをつけるために作るものなので、先ほどの完成品に比べて大きくても構いません。指先で柔らかくしながら円をつくっていきます。
けっこう硬いから、慎重にやってね。あせるとポキッと折れるよ。
茅をねじって編み込みながら茅の輪をつくる
くせがつきましたら、ご覧のようにねじりながら編み込んで円を作っていきます。末端は茅と茅の間に挟みこみます。
茅の輪が大きすぎるとひねり(短冊)をつけるのも一苦労だよ。
「蘇民将来子孫也」の短冊(ひねり守)をつける
最後に「蘇民将来子孫也」と書いた短冊を付けます。授与所に於いてあります。見当たらない場合、「ひねりください」伝えれば、奥から出してきてくれます。初穂料200円。
さらに御千度詣しとけばもうこっちのもんだべ、どう考えてもよー。
古い茅の輪やお守り、お札などは、返納する場所が設けてあるよ。