Overview
- 蓮華寺は、あらゆる意味に於いて穴場中の穴場であり、紅葉の時期を除けば参拝者もまばら。ヤギの一押しスポットである。高野にあるが、叡電の駅の近くでアクセスは容易。バスで大原方面に行くこともできる。
- 紅葉の穴場である。
- 庭園は蓬莱山、浄土を表す。撮影は書院からのみ許される。理由は本文中で述べる。
- ご本尊の釈迦如来像は決して開帳されない。理由は本文中で述べる。
- 本堂には比叡山焼き討ちを逃れた阿弥陀如来が安置される。
- 蓮華寺形灯篭という珍しい灯篭がある。
- おすすめは新緑と紅葉の時期であるが、一年間365日おすすめである。
- 静かにできる真摯な者のみが参拝すべきである。
最後の点は特に気をつけてくださいね~
蓮華寺の由来
蓮華寺は現在は上高野にある天台宗の寺院ですが、もともとは七条塩小路(現在のJR京都駅のあたり)にある、西来院という時宗の寺院でした。応仁の乱で荒廃したのち、江戸時代(1622年)に今枝民部近義(いまえだみんぶちかよし)という前田藩の家臣が、詩仙堂に住んでいた石川丈山、狩野探幽、黄檗宗の開祖たる隠元禅師などの協力のもと、祖父の菩提を弔うべく再興したもののようです。
蓮華寺という名前は『蓮華経』の中の蓮華蔵にちなんでいます。蓮華蔵とは簡単にもうしますと、大きな蓮華の花の上にある浄土のようなところです。その中心におわしますのが、盧舎那仏(東大寺の大仏さん)です。
庭園内の本堂には、ご本尊たる釈迦如来像、並びに、阿弥陀如来像、不動明王像が安置されます。他方、書院には阿弥陀如来像、観世音菩薩像、勢至菩薩からなる阿弥陀三尊が安置されます。
蓮華寺のみどころ1 庭園
Overview
他のものは後ほどご紹介してまいりますが、数ある蓮華寺のみどころの中で最たるものはやはり庭園と申せましょう。庭全体で須弥山(しゅみせん。古代インドの聖なる山)を表します。池泉鑑賞式庭園になっていて、書院から鑑賞するようになっています。また、柱を額縁に見立てる、額縁庭園にもなっています。池は鯖街道を挟んで流れている高野川から引いています。
書院からはスリッパに履き替え、庭を歩きながら、本堂に参拝することができます。尚、写真撮影は書院の中からしかできません。理由は後ほど詳らかにします。
蓬莱山
蓬莱山とは神仙思想の原型たる、古代中国の山です。ここでは石組みにより表現されています。(写真中1)上には耳がついた亀のが背負う石碑があります。石碑には今枝民部近義の祖父についての記載があります。耳がついた亀は、麒麟(首の長いキリンではなく、想像上の生物。キリンビールの麒麟です。ナイジェリアンドワーフゴートという私の仲間の体に龍の頭がついたような容貌。)という霊獣と亀が合一した姿を現しています。麒麟は空を、亀は地上を統べるとされます。両者が一体となることにより、ユニバース全体が表現されています。蓬莱山の手前には鶴石(写真中2)と亀島(写真中3)があります。この二つで蓬莱山の瑞祥を構成します。池の中には舟石(写真中4)があります。蓬莱蓬莱山や麒麟と鶴で暗示さえた理想郷たる浄土に向かうさまを表しています。
書院からですと、この浄土が紅葉に隠れて直接見えませんが、庭に出ると見えてしまうので撮影ができません。眼前には石仏が二体鎮座しています。手前が大日如来、奥が如意輪観音です。
絶対に撮るなよ
蓮華寺のみどころ2 本堂
釈迦如来像
本堂は庭園の中にあります。入ると正面、須弥壇上に螺鈿細工の厨子があり、ご本尊の釈迦如来像が安置されています。この厨子は明から輸入されたもので、松竹梅図と花鳥図が描かれています。現在でも往時の美しさを垣間見ることができます。古いもの故、開けようとすると、崩落の蓋然性があるそうです。ご本尊を守るため、御開帳は不可能とのこと。左右に「本源宗正派」、「覚苑永長春」とあります。これは仏教の正しい教えが発展することを意図して書かれたものです。
阿弥陀如来像
ご本尊の左側にあります。1571年に織田信長が比叡山を焼き討ちにする直前、(たしか)二人の僧侶が比叡山から阿弥陀如来像を担いで脱出し、近隣の村人に託しました。村人たちはこれを隠しておき、蓮華寺が再興された際、祀られたものです。阿弥陀如来像自体は鎌倉時代の作ですが、台座と光背は江戸時代に作成されたものです。色合いが異なるのですぐにわかります。
不動明王像
ご本尊右側にありあます。こちらも螺鈿の厨子内に鎮座しています。ザクロ模様で「寿」、枇杷模様で「福」と書かれています。
欅の柱
本堂の柱は直径が30センチくらいの欅でできています。欅の幹はまっすぐにはえるわけではないので、これほどの太さの柱を取るには相当の樹齢は要求されます。清水の舞台の柱同様、今日ではもう作れないかと思います。柱は太鼓の形をした礎石に乗っています。
セミ
本堂入口の扉の下のほうに金網で覆われた部分があります。よくみると、留め金の上に蝉の細工がされています。扉を閉めれば、本堂内は真っ暗になります。ご存知のように、蝉は地中に7年間もいます。故に暗闇の守り神として、扉の内側にいます。
蓮華寺のみどころ3 蓮華寺形灯篭
江戸時代に茶人に好まれたもので、通常の灯篭に比べ、細長くなっています。
蓮華寺のみどころ4 石仏
境内を入ってすぐ左手に、約300体の石仏が並んでいます。中央は地蔵菩薩、他は大日如来です。市電の工事の際に出土したものが、供養されています。
蓮華寺のおすすめ時期
Overview
蓮華寺は清水寺のように有名な観光名所ではありません。紅葉と雪が降った日以外はとてもしずかなところです。ほかに参拝されるかたがいらっしゃらないこともよくあります。庭園の好みというのは人によって異なるかと思いますが、喧噪を離れたい方には強くおすすめします。聞こえるのは池の流れの音のみ、「静謐」という言葉がよく似合う寺院です。静かにできない方、他人の迷惑を鑑みることができない方にはおすすめしません。
庭園の様子をビデオでまとめるからもう少しまっててね
青もみじ
新緑の時期にはご覧のように一面が緑になります。春には石楠花やシャガが咲いていて花を添えます。
紅葉
先ほども申し上げましたが、紅葉の時期は混みます。と、申しましても、永観堂や清水寺のように大混雑するわけではありません。池の周囲には紅葉が覆うように生えています。水面に写る紅葉を鯉が乱すさまがはかなげです。
境内に入ってすぐ左側には銀杏と紅葉が植えられています。うまくいけば、ご覧のように、散った銀杏を背景に紅葉を楽しめます。隠れた名所です。
雪
京都の雪は午前中が勝負です。ほかに行かれたい場所もあるかと思いますが、雪の蓮華寺はかなりおすすめです。
蓮華寺基本情報
蓮華寺へのアクセス
叡電三宅八幡駅から徒歩5分。
京都バス上橋バス停から徒歩1分。大原方面へのアクセスが容易です。
瑠璃光院から徒歩で約15分。