概要
- 宝泉院は大原にある桜の穴場です。
- 客殿に面する額縁庭園(盤桓園)は力強さと繊細さを同時に楽しめる稀有な庭園です。
- 所謂、血天井があります。
- お茶とお菓子をいただくことができます。
- ライトアップは穏やかで風情と温かさがあります。大原でライトアップを行っているのは宝泉院だけです。
- 2020年はコロナウイルスの拡散防止のため、中止となりました。
- 令和三年/2021年のライトアップは中止の模様。(公式サイトには何らの記載なし。)
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額縁庭園(盤桓園)と桜
額縁庭園とは、梁、若しくは桁と柱で形成される四角形を額縁に擬制して鑑賞する庭園のことです。宝泉院の一番のみどころは客殿にある額縁庭園です。
客殿に入るとまず最初に視界に入ってくるのが、巨大な松です。この松は、樹齢700年を超すといわれる五葉松です。樹高が約11メートル、幹が扇型に広がっており、見事な容貌で、平成3年に京都市の天然記念物に指定されました。
この松に向かうようにして祀られているのが御本尊の阿弥陀如来像です。
まずは、いの一番に拝めよ。お寺なんだからな。
踵を左に向けてみましょう。生命力の横溢を隠し切れない五葉松とはうって変わって柔和な庭が見えます。ここも先ほどと同じように桁と柱を額縁に見立てて鑑賞します。
ご覧の様に、楓、石楠花、ミツマタ、桜が繊細に咲いています。竹林の間からは夕日が垣間見えます。この後ライトアップもご紹介しますが、夕暮れ時に行き、刻刻と闇が訪れるのを待つのがおすすめです。
桜は、例えば、平安神宮の神苑のように沢山咲いているわけではありません。なんともうしますか、儚げに咲いています。桜を愛でることのできる場所は多々ありますが、冬の終わりと春の始まりが錯綜する宵を堪能するには最も適切な場所かと思います。
見頃は4月半ば以降になることが多いよ。
なんつーか、切ねー感じがするぜ。
右側には水琴窟があります。水琴窟とは、蹲(つくばい)などの下に空洞を設け、そこに水滴を落とし音を反響させる装置のことです。宝泉院のものはサヌカイトという石に落ちる音を反響させています。宝泉院には石でできた鉄琴のようなものが展示されていますが、これもサヌカイトでできています。これは宝泉院の住職で声明(声明)の大家であった深達僧正というお坊さんが音律を調べるために用いたものと伝えられます。声明とは仏教で用いられる音楽のことで、古くは奈良の大仏開眼の時にも奏でられました。
水琴窟には竹の筒が出ていて、そこから音を聞くようになっているものが多くあります。通常は一本ですが、宝泉院のものは竹筒が二本出ています(ちょうど写真の手前にあります。)。これは、理智不二(物質的なものと精神的なものは一つであるのような意味)を音で表現しているといわれます。実際、両者の音は若干異なります。
このように、盤桓園は力強さと静謐を同時に楽しめる稀有な庭園になっています。この客殿が面している庭を盤桓園(ばんかんえん)と呼ばれます。「盤桓」とは漫然とウロウロするとかそこにいるというような意味です。ここから、「立ち去りがたい庭」という意味が導かれます。
この庭の本来の入り口は上の写真のところです。まずはここで露払いとして桜を愛で、門をくぐると、圧倒するような五葉松が見えてきます。そしてその先には楓や石楠花、桜が繊細に咲いています。こうした二面性を持つ庭園はありそうでなかなかありません。
訪れた人を驚かすようにつくられているんだね。
血天井
次は毛氈の上に立って、上を見てみましょう。天井に染みのようなものがついています。この天井は元々は伏見城の床だったものです。1,600年、伏見城の戦いで徳川家康の留守を伏見城で守っていた鳥居元忠とその家臣が石田方に攻め込まれ自刃した時の床板です。場所によっては、顔の形まではっきりわかるような所もあります。また、今際の際にかきむしったと思われる痕跡など、かなり生々しいものです。
これは見世物として飾っているわけではなく、供養のために天井の一部としています。
さらに、拝観時には、この天井の下でお茶をいただくことができます。勿論、これも悪趣味からくるものではなく、供養のためです。和尚さんが「こうしてみなさんがこの下でお茶をいただくことも立派な供養になります。」と仰っていました。
この時、お茶についてくるお菓子が至高の一品、一乗寺の至宝、若狭屋末則さんの「ひととき」です。これは今日、保存料もなし、紙で包んであるだけの簡素なお菓子ですが、とてもおいしいものです。
後味がすっきりしています。
オレはよく買いにいくぜ
このひとときとお茶を楽しみ、峻厳かつ寛厚な庭を愛で、さらには供養もできてしまう場所は他にないでしょう。合掌。
ライトアップ
ライトアップは写真でみると、庭園側がかなり明るく照らしているような印象を覚えますが、実際には明るすぎず、暗すぎず、中庸をうまく表したライトアップになっています。近年、力いっぱい照らしまくって、風情や情緒が後退してしまうライトアップが散見されるようになりました。この点、宝泉院のライトアップは情緒という点では、申し分ありません。今年の春はまだわかりませんが、例年、声明の演奏などが行われています。
2020年はコロナウイルスの拡散防止のため、中止になりました。
時に、いまのところ、大原でライトアップを行っているのは宝泉院だけです。大原のバス停を降り、三千院に向かって歩いていく道すがら、真っ暗です。(宝泉院は三千院のさらに先にあります。)不安になるくらい真っ暗ですが、三千院を過ぎて、少し進むと、行灯があり、足元を照らしています。これらをたよりに進むと宝泉院にたどり着きます。中にはいると、ご覧のように庭園が照らされています。すると、なんだか安心すると申しますが、温かい気持ちになります。
みんなも来てみてね。
他にもいい所が沢山あるのですが、この安心感のようなものが一番つよく印象に残っています。じっさいにどんな塩梅かは、実際に体験なされてみるとよろしいかと思います。合掌。
宝泉院基本情報
宝泉院へのアクセス
京都バス大原バス停より徒歩約25分。