旛
概要
上の写真は明治天皇が即位された時の様子です。江戸時代までは華美な中国王朝風でしたが、明治時代からは王政復古の機運と相俟って、瀟洒な日本式の儀式になりました。
写真は東山天皇の即位礼の様子です。
写真は神社本庁発行の『御代替り』という小冊子です。表紙は上皇陛下の即位正殿の儀の写真が用いられています。主要な神社で配布されています。筆者は下鴨神社でいただいてきました。以下リンク先、神社本庁のサイトでも同じものを閲覧することができます。
正殿松の間の前にご覧のように旛(ばん)とよばれる旗のようなものが並べられ、文官武官装束の人威儀物を持ち並んでいます。威儀物とは儀式に荘厳な雰囲気を付与するために用いられるものの総称です。
旛はご覧のように桙にかけられています。この桙は武器ではなく、神事などで使われるものです。以下、各旗のつきみてみましょう。
萬歳旛
写真は下鴨神社で授与される令和大礼記念クリアファイルのものです。実物はもっと細長いものです。瑞雲が(おそらく)織り込まれた絹に「萬歳」には天下泰平が久遠に続くようにとの願いが込められています。
日像纛旛(にちぞうとうはん/にっしょうとうはん)
瑞雲が編まれた赤字に太陽を表す黄色の縁が織られています。。次に紹介申し上げます、月像纛旛と供に、宇宙を表します。
月像纛旛(げつぞうとうはん/げっしょうとうはん)
日像纛旛と相俟って、宇宙を表します。
菊花章大錦旛(きっかしょうだいきんばん)
左側は「五彩瑞雲白地絹」、右側は「五彩瑞雲赤地絹」という絹に皇室を表す菊の御紋が織られています。
写真は先ほど紹介申し上げました、下鴨神社で授与されているクリアファイルです。それぞれ、「五彩瑞雲白地絹」、「五彩瑞雲赤地絹」です。昭和天皇が即位された時に用いられた大錦旛を再現したものです。この時はご覧のように金鵄と八咫烏があしらわれています。今日これらがないのはおそらく政教分離原則との抵触を回避するためかと思われます。Sensitive issueのため、ここでのみ言及しましたが、他にもこのような対応をみることができます。
菊花章中錦旛(きっかしょうちゅうきんばん)
大錦旛より少し短く、青、黄、赤、白、紫、の五色があり、それぞれ瑞雲、菊の御紋が編まれています。(申し訳ございません。woovenは編むでよろしいですよね?疲労のため判断できません。明日考えます。)
菊花章小錦旛(きっかしょうしょうきんばん)
中錦旛より少し短く、こちらも青、黄、赤、白、紫、の五色があり、それぞれ瑞雲、菊の御紋が編まれています。
桙
写真は御蔭祭の桙で、三つ葉葵があしらわれますが、即位正殿の儀では巴紋があしらわれます。
鉦・鼓
Sho 鉦
こちらも御蔭祭のものですが、即位正殿の儀では火焔の枠に据え付けられています。参列者の起立・着席の合図に用いられます。
鼓
こちらも同様に御蔭祭のものです。鉦より小ぶりで、参列者が敬礼するときの合図に用いられます。
参考文献
神社本庁『御代替りー平成から新しい御代へ-』 神社本庁 2019年
中澤伸弘『宮中祭祀ー連綿と続く天皇の祈りー』展転社 2010年
「皇室の20世紀」編集部 『図説 天皇家のしきたり案内』小学館 2011年