Overview
平安神宮は平安京遷都1100年を記念して、内国勧業博覧会に際し、大内裏の一部を復元し、創建されました。復元されてのは、大内裏の正庁たる朝堂院で、実物の8分の5の大きさになっています。御祭神は平安京遷都を行った桓武天皇と、最後の平安京で在位した孝明天皇です。
本稿では、平安神宮のみどころを平安京を踏まえつつ、ご紹介します。
平安神宮のみどころ
平安神宮と平安京の歴史
桓武天皇と平安京遷都
平安神宮とは、平安京の一部を再現したものです、そこで、まずは、平安京につき概観し、平安神宮の魅力に迫ります。
794年、桓武天皇は日本の首都を長岡京から平安京に移しました。桓武天皇は奈良の平城京で即位しましたが、首都を長岡京に移しました。これには以下の理由があります。
1) 平城京では仏教勢力がつよくなり、政治に深く関与するようになっていました。桓武天皇は自らの治世からこれを削ぐ意図がありました。
2) 桓武天皇はそれまでの天皇とは血筋が異なり、後ろ盾が脆弱だったため、新たな都で自らの支持者とともに政治を行う意図がありました。
上記の理由から784年に長岡京に遷都しますが、自然災害などに見舞われ、桓武天皇の身近な人々も次々と不幸に見舞われます。陰陽師に理由を占わせたところ、流罪に処した弟の早良親王の祟りだと判明し、10年後には平安京に再び遷都します。
この時、新な都を怨霊から守るためにいくつもの方策が講じられ、結果、平安京は四神相応の思想により建設されます。
四神相応
四神相応とは、中国の陰陽思想に基づく地相のことです。この考え方では、四種の聖獣が東西南北の土地を支配すると考え、以下の表のように、それぞれの地相にあてはめます。
方角 | 聖獣 | 地相 | 平安京 |
東 | 蒼龍 | 川 | 鴨川 |
西 | 白虎 | 道 | 山陰道 |
南 | 朱雀 *1 | 池 | 巨椋池*3 |
北 | 玄武*2 | 丘 | 船岡山 |
*1: 鳳凰のような想像上の鳥
*2: 蛇が絡まった亀のような容貌の想像上の生物
*3: 現存せず
朝堂院を模す
平安神宮は全体で、平安京の平安宮とよばれる区域にある朝堂院と呼ばれる建物を模しています。平安宮の中には、天王の住居たる内裏、大嘗会(天皇が即位後初めて行う豊作を祝う儀式)などの大規模な饗宴を行う豊楽殿(ぶらくでん)、即位の礼など公的な儀式が行われる朝堂院からなります。
朝堂院という名前の建物があるのではなく、大極殿、朝堂(のちに八省院と呼ばれるようになります)、朝集堂という複数の建物がから構成されます。
平安神宮の一番の見どころは、このように平安京を模した、すなわち、平安時代の建物の外観を供えているということです。京都と申しますと、平安時代が想起されますが、ほとんどの建物は江戸時代の創建です。この点、平安神宮は8世紀のまだ、中国の影響が色濃い時代の建造物で、平等院鳳凰堂を除くと、他ではこの時代の様式の建物はなかなか見ることが出来ません。平等院に興味がおありの方は以下のリンクをご参照ください。日本語版はまだ先になります。
外拝殿
平安神宮の本殿は外拝殿、内拝殿、本殿からなります。写真は外拝殿で、大極殿を模しています。大極殿は朝堂院の中で最も重要な建物で、即位の礼など公的な儀式が行われる場所です。外拝殿の奥に内拝殿と呼ばれる結婚式などの儀式を行う場所があり、そのさらに奥に、桓武天皇と孝明天皇が祀られている本殿があります。参拝の折には、外拝殿から、本殿に向かい参拝します。外拝殿ではお守りなどの授与をする場所があります。
屋根の両端には鴟尾(しび)という瓦のようなものがついています。これは、水面から顔を出した魚の尾を模したもので、建物を火災から守ると信じられていました。
また、建物の柱は朱色に塗られていますが、これは炎や血液を表わし、邪気から様々なものを守る色だと信じられていました。
白虎楼と蒼龍楼
外拝殿は廊下を介して、東側に蒼龍楼、西側に白虎楼という建物と繋がっています。これは先ほど申し上げました、四神相応を表わしています。
龍尾壇
外拝殿の前には龍尾壇と呼ばれる柵のようなものがあります。もともとは回廊だったものが、柵付きの段差になったものです。この龍尾壇の先には朝堂(a.k.a.八省院)がありますが、平安神宮では省略されています。
*龍尾壇は2018年9月現在、工事中です。また、幟は普段は立っていません。
神楽殿と額殿
朝堂が省略され、そのさらに南にあった朝集堂という建物が再現されています。東側が神楽殿、西が額殿という名称です。それぞれ、結婚式や展示などが行われます。
應天門
應天門は朝堂院の正門ですが、平安神宮でも正門になっています。
扁額の文字は弘法大師筆のものが掲げられていました。應点門の應の字の心の点を書き忘れた状態で掲げられたため、下から筆を投げて、点を加筆したと伝えられます。この逸話から、「弘法も筆の誤り」ということわざがうまれました。
大鳥居
平安神宮の参道にあります。高さ約24メートルで、中が空洞になっていて、階段があります。(保守点検用のもので、中に入ることはできません。)1928年に昭和天皇即位を祈念した建てられました。創建当時は日本で一番大きな鳥居でした。鳥居ですが、歩道の上、車道ギリギリに建っているので、歩いてくぐることはできません。
神苑
(池泉回遊式庭園)
本殿の後ろ側にあります。面積は約10,000平方メートルあり、南、西、中、東の四つの庭園からなります。平安神宮は平安時代の建物を模していますが、庭園は池泉回遊式庭園という江戸時代の庭園の様式を踏襲しています。これは、池の周りの歩きながら愛でる庭園の琴です。明治の作庭家、7代目小川治兵衛の作庭によります。
南神苑
入口から南庭園に至ります。谷崎潤一郎の著書、『細雪』にあるように、枝垂れ桜の名所です。桜の季節には紅しだらコンサートが毎年行われます。市内でも屈指の桜の名所です。
西神苑
南神苑の次は西神苑に入ります。ここには白虎池という池があり、初夏には睡蓮と菖蒲が咲き乱れます。八ツ橋があり、菖蒲のなかを進んでいけます。
中神苑
西神苑を過ぎると、中神苑に入ります。ここには蒼龍池という池があり、菖蒲や杜若が有名です。平安神宮の神苑には約1,000種の杜若が咲くといわれますが、とりわけ有名なのが、折り鶴と呼ばれるものです。
この杜若は光格天皇が命名したものです。光格天皇とは、朝廷の儀式を復興し、明治維新に寄与し、現在の天皇制の下地を作った天皇と評されます。現時点では直近の上皇であり、今上陛下も退位についてお考えになる際に、光格天皇につき特段の考慮をなさったそうです。
蒼龍池には飛び石でできた臥龍橋という橋があります。この石は16世紀の三条大橋と五条大橋の橋げたを再利用しています。
There are cylinder-shaped stepping stones called Garyu-bashi (臥龍橋). The stone is debris of Sanjo and Gojo bridge in the 16th century.
東神苑
最後は東神苑に至ります。ここには栖鳳池(さいほういけ)と呼ばれる池があります。ここには京都御所の遺構が二つあります。
一つ目は泰平閣と呼ばれる橋です。普段は腰掛に腰を下ろし、庭園を鑑賞することが出来ます。鯉や亀にお麩をあげることが出来ます。他にも鷺や鴨がいます。
二つ目は尚美館と呼ばれる建物です。池に面して建っていて、紅しだれコンサートの際にはステージになります。
季節のみどころ
例祭
御祭神たる桓武天皇が平城京で即位した、4月15日に行われる、平安神宮で行われる、いちばん重要なものです。当日は勅使が幣帛(神道の祭祀で神様に捧げるものの総称)と共に、参向します。
桜
左近の桜
外拝殿の前には左近の桜があります。左近とは左近衛(令外官の名称)の略で、重要な儀式などの際、左近衛が陣を敷いたことにちなみます。
この左近の桜は京都御所の紫宸殿の左近の桜から枝分けしたもので、同じ時期に満開になります。現在では、御所はいつでも拝観できますので、同時に観賞してみるのもよいでしょう。
屋根の上の枝垂れ桜
これは神苑の枝垂れ桜ですが、外拝殿と白虎・蒼龍楼をつなぐ廊下の屋根の上に去りだしてきます。一気に咲いて、すぐ散ってしまうので、なかなか難しい桜ですがご覧のように建物と相まって非常にきれいです。
染井吉野
枝垂れ桜が有名な平安神宮ですが、ソメイヨシノも咲きます。写真は應天門をくぐって左側にあります。
神苑の枝垂桜
先ほど申し上げましたように、これが一番きれい、かつおすすめです。
四月には毎年、紅しだれコンサートが開催されます。音楽の中、神苑を進んでいき、春の訪れを体感できます。平安神宮の桜につきましては、以下のリンクをご参照下さい。二本語版は後程作成予定です。
時代祭
毎年、10月22日、平安京遷都の日に行われます。葵祭、祇園祭と並ぶ京都三大祭の一つで、約2,000人の人々が行列をなし、京都御所から平安神宮まで進みます。行列は明治時代から平安時代までの時代ごとに分けられ、衣装はすべて伝統的な手法で作成されたものです。詳細は以下のリンクをご参照ください。
大難の儀
節分の原型となった宮中行事が再現されます。こちらも当時の衣装、形式に則り挙行されます。平安時代を想起させる行事で意外と穴場。
ライトアップ
年末年始、紅しだれコンサートなどの折には、ライトアップと申しますか、夜間に参拝することが出来ます。
平安神宮 基本情報
住所など
名称 平安神宮
住所 京都市左京区岡崎西天王町97
電話 075-761-0221
FAX 075-551-0225
拝観料 無料
ただし、神苑は大人600円、小人300円。
所要時間 平安神宮 20分~ 神苑 1時間~
拝観時間
平安神宮
1月15日 ~ 2月28日
平安神宮 6:00-17:30
神苑 8:30-16:30
3月1日 ~3月14日
平安神宮 6:00-17:30
神苑 8:30-17:00
3月15日 ~ 9月30日
平安神宮 6:00-18:00
神苑 8:30-17:30
10月1日 ~ 10月31日
平安神宮 6:00-17:30
神苑 8:30-17:30
11月1日 ~ 1月14日
平安神宮 6:00-17:00
神苑 8:30-16:30
平安神宮へのアクセス
各項の料金は一日乗車券等を使わずに現金で支払った場合の料金を示しています。所用時間は概算です。道路の混雑状況などにより、変化することがあります。
平安神宮のアクセスの特徴
最寄りのバス停は岡崎公園 美術館・平安神宮前。バス停を通過するのは、5、46、100, 110の4系統のみで、アクセスがあまりよくありません。そのため、バス停は平日でも混雑していることが多々あります。
JR京都駅から平安神宮へのアクセス方法
通常期のJR京都駅から平安神宮へのアクセス方法
運賃 230円
所要時間 35分 (バス30分+徒歩5分)
京都駅前バス停から市バス5、100、110系統に乗車。
岡崎公園 美術館・平安神宮前バス停で下車。
ハイシーズン、週末、連休のJR京都駅から平安神宮へのアクセス方法
運賃 460円 (地下鉄260円+市バス230円)
所要時間 35分 (地下鉄15分+乗換10分+市バス5分+徒歩5分)
市営地下鉄京都駅から地下鉄烏丸線、四条・烏丸御池・国際会館方面ゆきに乗車し、烏丸御池駅で東西線、六地蔵・浜大津方面ゆきに乗り換え。
三条京阪駅で下車し8番出口から地上に出て、三条京阪前バス停から岡崎ループに乗車。(空いていれば5系統も利用可。バス停の場所は同じ。)
岡崎公園 美術館・平安神宮前バス停で下車。
その他場所からのアクセスは以下をご参照ください。